他の星から 村越編1

他の星から 村越編1







村越はキャプテンを辞めた。何年もずっとチームを束ねる立場を担ってきたけれども、その役割はいつの間にかおしまいになっていた。
ずっと昔、監督もフロントも信用できずチームがどうしようもなくなったとき、村越はチームメイトたちに言った。
「俺についてきてくれ」
あの言葉は本心だし、そのためにいろんなことをやってきた。ただ、もう潮時だ。達海が監督としてやってきて、チームは変わり、また自分も変わらなければならなかった。そのために村越はキャプテンマークを外すのが、チームのためにも自分のためにも良いことだったのだ。
振り返ってみればこれまでの人生の中で、何かをやめる決断をしたことは少ない。
子どもの頃に習っていたそろばん教室は中学に上がる時に自然に卒業したし、高校のサッカー部のキャプテンも慣例通り引退時に下の学年に引き継いだ。喫煙のように、わざわざやめなければならないような習慣は最初から持ち合わせていなかった。なにかをやめて、でもその場に居続けるというのは、村越にはほとんど初めての体験だった。
キャプテンをやめても、村越の日常は変わらない。でも背中が軽くなって、ひとりの選手としてのシンプルな目線で見る世界は、なにもかも変わったようにも見えた。
キャプテンを杉江に引き継いだ日は、馬鹿みたいに能天気に空が青くて、一羽のかもめが練習場の上を飛んでいた。くるくると旋回して選手たちを見下ろすかもめは、キャプテンが変わったETUの次の采配でも考えているのだろうか。

数日後の練習後、村越はまっすぐ帰宅しようと思っていた。前日は黒田や堺が村越の慰労会を催してくれていささか飲み過ぎた。だから今日は帰って休養するつもりだったのだ。
駐車場に向かう途中で、思いがけない相手に声をかけられた。
「やあ、コッシー」
ジーノだった。村越はキャプテンをやめてからの数日、ジーノに観察されているように感じていた。けれどもジーノは昨日の村越の慰労会には来ていなくて、なにか思うところがあるのか気になっていたのだ。
「なんだ。ジーノ」
「このあと時間あるかい？」
「帰るだけだから、まあ」
村越の返事に、ジーノは機嫌良さそうに笑った。
「それはよかった。この近くに素敵なサヴァランを出すお店を見つけたんだ、よかったら一緒にどうかな」
「さばら……？」
鯖のような、違うような。耳慣れない単語に、眉間にしわを寄せる。
「サヴァラン。ケーキだよ。甘いものは嫌いだったかな？」
「嫌いじゃねえよ」
「よかった。それなら行こう、歩いて行けるところだから車は置いて行くけど構わないでしょう？」
ああ、と低く返事をして、ジーノについて歩き出す。練習後にケーキを食べに行くなんてあまりに不似合いで、まるで女子高生みたいだなと思いついて村越は密かに笑った。
「どうかした？」
「いや、なんでもない。……練習後にわざわざケーキ屋に行くのなんか初めてだ」
「それはよかった、ボクもだよ」
クラブハウスの出入り口あたりでしゃべっていた世良や清川が、村越とジーノという取り合わせを不思議そうに見つめながら挨拶してくる。
「お疲れ様ッス」
「お疲れ。また明日」
挨拶を返しながら、自分だってジーノと並んで歩くことを不思議におもっているのだから、他人であれば尚更だろうなと考える。
外に出るとまだ明るく、ちょうどおやつどきに丁度いい時間帯だ。平日の浅草は人通りもそこそこで、歩きづらいほどの人混みはないが活気は休日と変わらない。
「なんでわざわざ俺を誘ったんだ？」
「コッシーとおしゃべりしたかったから。キャプテンをやっているコッシーをすごく好きだったから、キャプテンじゃなくなってコッシーも好きになりたいなって思って」
好き、だなんて人に言われたのはいったいいつぶりだろうか。恋愛感情でないにしろ、そう言われるだけで自分が認められているようで胸の奥がくすぐったくなる。
ありがとう、なのか。言葉を探しているうちに、先にジーノが口を開いた。
「コッシーはさ、なんでこの時期にキャプテンを辞めることにしたの」
今じゃなくても、例えばシーズンが終わってからでもよかったかもしれない。いや、シーズンが終わってからでは遅かった。まだまだこれから戦っていかなければならない、今でなければ。
「俺も新しいことをしようと思った」
するりと口からでた言葉はそんなことだった。もっといろんなことを考えたはずなのに、ジーノの前では、冗長な言葉はみっともない気がした。
「いいね、そういうの」
ジーノが大通りから脇に入った裏路地で足を止める。このお店だよ、と指差したのはいかにもこの浅草で何十年と営業していている風体の喫茶店だった。さいきん作り直したらしい、扉の横に立てかけられた手描きの看板だけが妙に新しくて浮いている。
「それじゃあさ、ボクとも一緒にしようよ、新しいこと」
「ケーキを食べるとかな」
「それもいいけど、もっと素敵なこと」
そう言うとジーノは急に村越の頬を掴んだ。何を、と問う前に端正な顔が近づいて、唇に柔らかいものが触れた。ちゅう、とわざとらしい音を立てて何度もぶつかってくる。
びっくりして、慌てて引き離そうとジーノのシャツの背中を掴むけれど、彼は彼で村越の腰のあたりをぐっと抱き寄せてくる。
ようやく彼が満足して唇を離すころには、村越が目を白黒させるしかなかった。
「こういうこととかね」
ジーノは何事もなかったかのように微笑み、喫茶店の扉を開いて薄暗い店内に入って行った。引き返すという選択肢はまるで浮かばず、村越は吸い込まれるようにジーノのあとに続いて店の扉をくぐった。
ジーノのいうサヴァランとは、洋酒の効いたケーキだった。
「わあ、これは衝撃的なケーキだね」
白いメレンゲにドーム状に包まれた食感は新鮮だったけれども、直前に触れたジーノにされたことのほうがよほど衝撃的だった。

他の星から2

あの

下に書いた話を読みなおしてみて、私、自覚していたよりしげゆきがキャプテン辞めたのがショックだったんだな！って思いました。いやよかったなーって気持ちと、いやだバッキャローって気持ちと両方あるのはわかってたんですけど、なんか、もう、なんか……。
あと、今週みたいな扱いをされるくらいなら、しげゆきは今後しばらく登場しなくていいです。

他の星から

モーニングネタバレ注意

夏休み

どうもどうもー。夏コミお疲れさまでした。夏コミでスペースにお立ちよりくださったみなさまありがとうございました。

新刊はぺらい人魚本でした。夏コミの週にもろもろラストスパートだぜ！と思ったらバタバタと仕事が忙しくなったりしてタイミングの悪さにブチ切れそうになりながら書いたりとかしてたんですが、夏コミ当日の朝に表紙作るのを忘れていたことに気が付いたりしてもうなんかもう…ってかんじでした。どうもすみませんでした。

 

拍手もありがとうございます～コメントもありがとうございます～当初から主にしげゆきが好きという気持ちだけでやっているこのサイトでございます。

 

以下、スーパーただの日記タイム

最近のしげゆき事情

※モーニングネタバレです。
※個人の感想です。

半年ぶりとか！

おひさしぶりでございます、夏コミ受かりました。

土曜日西さ-29a　しげゆきが好きすぎて以下略

です。モーニングの展開にいろいろおもうところがあって泣いちゃいそうだけど思い出をこの胸に新刊がんばってつくりますーよろしくおねがいします。

ごぶさたしております

どうもーるーほーです生きてます。冬コミはスペースいただいていたのですが新刊はおろかサイトでの告知もなにもできておらずすみませんでした（全方向）。参加はしましたー楽しかったです。スピカさんと友人の太田がスペースを手伝ってくれました。
しばらく仕事が忙しくておはなしを書くどころではなかったのですが、ひと段落したので、そっと、じのばきこしを書いていこうかなと思います。いちおう次の浅トラは申し込む予定です。春コミはそういえば申し込みそびれました……今気が付いた……おっおおん。

このあとはひさしぶりに日記を書いていきたいとおもいます。同人色のない日記をな！

しばらく仕事をするために生きている人みたいなかんじになっていましたが、体力も根性もないのでそこまででもないかなってかんじでした。私にしてはがんばってたってくらいでたぶん世の中的にはそこまででもないよねみたいな。体壊すから働きすぎには気をつけてね、とか優しい方に言われたりしていたんですが、大丈夫わたし根性ないから体壊すほどがんばれないから！　と笑顔で答えるかんじでした。自慢にならねえ。
そんでまあその間にクリスマスや年末年始が過ぎ去って行ってしまったので、先日は失われたクリスマスを取り戻す会などをいたしました。ひとりでやる気まんまんだったのですがスピカさんが来てくれてクリスマスプレゼントまでくれました。やさしい。ポットパイとローストビーフときのこと水菜のサラダとアボカド入りのポテトサラダ作った。いちごとバケットも食べた。そんでシャンパンとサダハルアオキのケーキをね！　おいしかった！
次は失われた大みそかを取り戻したいです。お正月はあったからね。地元の神社と浅草寺と、初詣も行ったしおばあちゃんちも行ったからね。２日から仕事もしてたけどね。

スパーク＆トライアンフお疲れさまでした

どうも、ご無沙汰しております。先週はスパーク＆トライアンフお疲れさまでした。両日スペースありましたが告知するのをすっかり忘れてすみまセーヌ川。
新刊はスパークでは間に合わず、トライアンフに「源氏の君の物語　明石」を持って行きました。げんじーのさんの明石編です。源氏物語とか平安文学にあんまり馴染みとか萌えとかがない方にもわかりやすく、とおもって書いたんですが、ただ自分がバカまるだしなかんじの話になりました。コピーした分完売だったので刷り足して次のイベントにも持っていきます。
げんじーのは今回結城さん、スピカさん、とりこさんとうちの4種類出たんですが、なんか前に出されたＭｏｏnlyさんもですけどそれぞれにものすごい強烈な個性を放っていてすごいおもしろい企画でした。アンソロと違って体裁としては個人誌なので、余計にみなさんのびのびとしているというか……いやたぶん私が一番緊張感なくやらせていただいたんですけど……。なんていうか素晴らしい企画に参加させていただいてありがとうございました、Moonlyさんのおかげで楽しかったー＞＜
あと両日ともすごくのんびりで、スパークは遅刻ギリギリですべりこみでした。コシ受スペースはたぶんうちだけだったとおもうのですが、ジーノ攻の流れに配置していただいて、そうかーうちしかいないとこういう配置にもなるんだーとちょっとおもしろかったです。ぼっちでぼんやりしてて、しかも超絶準備不足でおなかすいたわーとか思ってぼけっとしてたらおとなりのスペースのかたにすごくやさしくしていただいて、もみじまんじゅうまでいただきました；；　そっこうで食べた；；　あとスパークはお買いものがすごくたのしくて、ウルフルンちゃん受プチとか、牛たんプチとかに喜び勇んでいきました。あとお友達が主催のトライガンプチのパンフがかっこよかった。
で、トライアンフはコシ受がたくさん並んでいて壮観でした。6スペースかな？　すげー＾＾
まあそんなかんじで本を手に取ってくださった皆様、差し入れを下さった方、かまってくださった皆様どうもありがとうございました。おかげさまで体力もつかなあとおもった2日連続イベントでしたが無事楽しくすごすことができました。


……と、ここまではいいんですけどね、この間に冷蔵庫が壊れたりとかして、そんでトライアンフの翌日私夏休みを取っていたんですけれども（今さら）、タイバニ映画見に行った後で具合悪くなって翌日も会社休んで、いろいろあってウイルス性胃腸炎と判明しました。ふう。イベント前まで仕事がすげー忙しくて、そんでイベント終わってほっとして、たまってた疲れとかがいろいろアレしたのかもしれないんですけど、もうとにかく先週一週間棒に振った感じでした。おおう。この週末も何もせずに自宅でダラダラすごしました。洗濯すらしてねぇ。あ、土曜にカーチャン襲来イベントがあった。
いや、それでですね、散々会社の人とかおともだちとかいろんなひとにご心配いただいといてアレなんですけど、たぶんウイルス性胃腸炎の原因が、いやほんとたぶんなんですけど、冷蔵庫がぶっこわれたあと常温放置された肉でカレー作って食べたからじゃないかなっていう……アレなオチがあって……恥ずかしくてまだお母さんにしか言ってないのでここで告白しておきます。前の週の肉の大売り出しみたいなときに買って冷凍してあった肉がもったいねぇなっておもって、たぶん2日弱くらい？　常温放置状態だったけどまあいけるかなって……おそらくそれが原因ですね。こんなこともあるんだなぁあ！　と今後心にとめて生きていきたいとおもいます。まだ全然いつものすこやかな状態に戻れていないんですけれども。


メルフォから！　いろいろと！　ありがとうございます！！
＞いんざぎさん
わああ丁寧な感想をいただきましてありがとうございます！！　人魚姫しげゆきはだいぶ前に書いたので自分の中でも結構忘れてしまっているんですが、言われてみればまだ若いルーキーしげゆきかもしれないです。人魚なので、あどけなくてものを知らなくて心がきれいで、という幻想をぜんぶぶちこんでます＾＾
あとしょたばきも！　ありがとうございます！　私も自分で大好きなものや萌え要素をいっぱい入れているので楽しんでいただけるとうれしいです。でもいっぱい褒めていただくと恥ずかしい////　段々しょたばきくんが成長して、ちゃんとえんぴつけずったり連絡帳を見せたり九九を言えるようになってしまうのが逆に淋しい今日この頃です。

＞haruさん
メルフォから！　ありがとうございます！！　えへへわかりやすいと言っていただけて嬉しいです。私も細かいこととかいろいろ忘れていたので簡単にわかりやすくを心がけて書きました。明石は源氏物語の登場人物の中ではそこまで目立つ方じゃないとおもうんですけどかなり好きなんですよねー。単なる現地妻かと思いきや源氏との間にこどもができる数少ない女性の一人だし。結構苦労人ではありますが、しげゆきだったとしてもどうせ他に浮気する相手も全部しげゆきだしね！　とおもうと気楽ですよね笑　ではまたかまってください～！

＞しおんさん
こんにちはー！　スパークでは大変お世話になりましてありがとうございました＞＜　話しかけていただいてすごく嬉しかったです。わざわざ感想までいただいてありがとうございます！　しょたばきは私がとても楽しみながら書いているものなので（スピカさんを巻き込んでいますが）、読んだ方はついてきていただけてるのかなーと不安なところもあったので、そういうふうに言っていただけるととてもうれしいです。けいこは我々が最も力を入れていると言っても過言ではないキャラクターで、女神のような子です。けいこはけいこで別にけいこ本とか出しているんですけど、こちらもスピカさんと私の趣味丸出しなかんじですｗｗ　まだいつになるかはわからないのですが、いちおう続編はしょたばきくん、ジーノお嬢さん、しげゆきの3人でグアムウエディング編を書く予定です＾＾
しおんさんのご本も拝読しましたー！　『コシさんが愛されてる本ですよ』っておっしゃってた通り、しげゆきがみんなに愛されててほんわかしました＾＾　あとガンナーズの面々が個性丸出しで、この人たち絶対こうだわーｗｗ　ってすごくおかしかったです。素敵なご本をありがとうございました！　またかまっていただけたら嬉しいです！　では！

まあだいたい私かプリキュアかってかんじですね

今週の羽田さんは衝撃でございましたね……ついにわかった羽田さんの職業！　ていうか羽田さんがらみのカップリング多すぎて……気が多いよ羽田さん……。羽田さんはたっつみーに愛憎をいただきつつしげゆきに憧れ重力シンパシーで仲間たちとかきっこしながらゴローちゃんに恋したりコータにしりを狙われてカベセンをリスペクトしつつ生徒たちに性的な目で見られたりして大忙しですね！！！　はたさん大忙し！！　困ったもんだぜ！！　ほんと困る……はたさんどうすんねん……誰と付き合えばええねん……これはハーレムエンドの予感！

あとタイバニ舞台の千秋楽のライブビューイング見てきたんですけど、すっごいエンターテイメントってかんじでたいへん面白かったです。牛たん活躍してたし！！！　私はずっとああいう牛たんが見たかったんだそうなんだ……アニメ本編で牛たんけっこうひどい扱いだったので。敵に対して「来いよ」って言ってるのが性的すぎてつらかったです。きっとベッドの上で空さんを誘うときもああいうこと言っているに違いない＞＜　あとですね、カーテンコールはなんか牛たん役の横山一敏が上着を脱いででてきてものすごいいい二の腕を見せてくださったときに頭がパーンてなりました。
空さんがいなかったのはとても残念でした。空さんのガワがロープアクションでぶらーんぶらーんてなってるとことかいいの？！　っておもいつつ、それもまた空さんとしてかわいいからいいやって……笑　折紙はイケメンすぎてつらかった。折紙ってイケメンだけど小柄なイメージだったので、ふつうのシュッとしたイケメン来た！　っておもって……牛たんにおんぶとかされてるし……折牛やん……。ホァンちゃんもかわいかったなー！　腰細いし！　ネイサンもシュッとして美しかったしあとギャバン教官かっこよすぎてうっかり惚れそうになりました。乙女心が疼くじゃない。
いや実際なんか最初はどうなる事かと思ってたんですよ、どちらかというとテニミュみたいなのを想像していたので。でもこないだみたプリキュアミュージカルのほうに近かったです。なんかこう、会場のみんなで一緒に盛り上がろう的な。アンコールのオリオンも会場のみんなで歌詞を手話でやってたりとかすごかったです。あと「ここで終わるはずがないのに」まじかよっておもいましたぜ。たのしかったですー。

あと今週のプリキュアがクッソ笑えましたｗｗｗ　特に最後の精神攻撃ｗｗｗｗ　あとウルフルンさんもウルトラキュートでどうしたらいいのかわかりません……プリキュアのみなさんがけしてけっして水着にならないのにウルフルンさんだけ性的な水着で……犬かきしてて……よだれ出そうなくらいかわいかった……。だれだよこの脚本書いたのって思ったら成田さんだったｗｗｗ